軟水効果【南部鉄器と健康】7日間で学ぶ「鉄分・ミネラル補給と体の整え方」⑥
6日目 お茶・コーヒーを美味しくする!鉄器の「沸騰」が水質を変える理由
南部鉄器の魅力は、鉄分補給という健康面だけにとどまりません。日本の文化と密接に関わる**「お湯の味」**、ひいてはお茶やコーヒーの風味を格段に向上させる力を持っていることをご存知でしょうか。今日は、鉄瓶で沸騰させることで水質がどのように変化し、飲み物を美味しくするのか、その科学的な理由に迫ります。
鉄器が水道水の「カルキ臭」を取り除くメカニズム

水道水には、消毒のために微量の塩素(カルキ)が含まれています。この塩素こそが、水道水特有の臭いの原因です。鉄瓶で水を沸かすと、主に二つの現象が起きます。
- 長時間沸騰による蒸発: 鉄瓶は厚みがあるため、一度沸騰してもすぐに火からおろさず、しばらく沸かし続けることで水中の残留塩素を効率よく蒸発させることができます。
- 鉄イオンによる吸着: 鉄瓶の内側から溶け出す鉄イオン(二価鉄)が、残留塩素と反応し、塩素を分解・吸着する作用があると言われています。
この二重の効果により、水道水特有の「カルキ臭」や「雑味」が軽減され、水本来のまろやかさ、口当たりの良さが引き出されるのです。
味がまろやかになる理由:鉄イオンがもたらす軟水効果
鉄瓶で沸かしたお湯は、「舌触りがまろやかになる」「甘く感じる」と評されることが多いです。これも鉄イオンが関係しています。
- ミネラルバランスの変化: 鉄分が溶出することで、ミネラルバランスが微妙に変化します。この変化が、特に繊細な風味を持つ緑茶や、コーヒーの味に奥行きと丸みを与えます。
- カテキン・カフェインとの反応抑制: 雑味のないまろやかなお湯は、お茶の渋み成分であるカテキンや、コーヒーの苦味成分であるカフェインと過剰に反応するのを抑制し、素材本来の旨味や香りを引き出しやすくします。
湯沸かし用鉄瓶の選び方と手入れの極意
湯沸かし用として鉄瓶を選ぶ際、健康面と味の面で最も大切なのは、内側がホーロー加工されていないものを選ぶことです。

- 内側が剥き出しの鉄瓶を: ホーロー加工されているものはサビに強いですが、鉄分が溶出せず、お湯の味を変える効果も期待できません。昔ながらの内側が「剥き出し」の鉄瓶を選びましょう。
- 絶対にゴシゴシ洗わない: 鉄瓶の内側を洗剤で洗ったり、硬いタワシでゴシゴシこすったりしてはいけません。内側の白い湯垢(ゆあか)は、鉄瓶をサビから守り、お湯をまろやかにする大切な層です。軽くすすぐ程度で十分です。
- 使い続けることが最良の手入れ: 鉄瓶は「使うほどに育つ」道具です。毎日使い、湯垢がしっかり付くことで、サビにくい状態になります。
明日はいよいよ連載の最終日です。これまでの知識を総動員し、南部鉄器を取り入れた**「鉄分リッチで丁寧な暮らし」**をどう実現するか、まとめとして提案します。
